2007 年 71 巻 3 号 p. 175-182
ワカサギの回遊パターンを明らかにするために,まず飼育実験によって飼育水の塩分と耳石Sr:Ca比の直線回帰式を求めた。次いで日本各地のワカサギ耳石の中心核から縁辺に至るSr:Caプロファイルを基に,各水域における個体の塩分履歴を推定した.網走湖,小川原湖の一部の個体,および鷹架沼,宍道湖の全個体のSr:Ca比は常に低い値を示し,一生を湖内に滞留していたことが示唆された.これに対して,海水域で生活したと判断される高いSr:Ca比を有していたのは,八戸沖,三沢沖,閉伊川,追波湾のワカサギと網走湖および小川原湖の一部の個体であった。しかし、閉伊川と小川原湖以外では,海水域の利用は一時的であり,主に汽水域に生息しているものと考えられた.これらの結果から,ワカサギの回遊パターンは個体群によって様々であるが,汽水域における生息期間の生活史に占める割合が大きいことが示された.