水産海洋研究
Online ISSN : 2435-2888
Print ISSN : 0916-1562
原著論文
水塊クラスター解析ソフトの開発と東北近海域の水塊変動解析への適用―漁況変動解析への応用に向けた事例解析―
田中 雄大今村 豊児玉 琢哉及川 利幸矢倉 浅黄佐伯 光広真壁 昂平鈴木 裕也大畑 聡金子 仁岡崎 雄二黒田 寛和川 拓長谷川 大介筧 茂穂奥西 武
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2019 年 83 巻 3 号 p. 151-163

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抄録

クラスター解析によって水塊分類を行うソフトウェアを開発し,東北沖海域および千葉県近海域の水温・塩分データを用いて,水塊の分布,出現率の経年変動の解析を行った.夏季東北沖海域における表層・亜表層水塊の出現率の経年変動は,親潮第1分枝の南限緯度との関係が深いことが示され,親潮系の冷たい水塊(黒潮系の暖かい水塊)に対応するクラスターは,親潮第1分枝が南偏(北偏)する年に出現が増加する傾向にあった.この傾向は,既存の方法では分類が困難な表層の水塊についても認められた.春季千葉県近海域では,黒潮流軸離岸時に,冷水系水塊の出現が増加する傾向にあった.クラスター解析による水塊解析結果を漁況変動解析へ応用するにあたって,各魚種の水温適正等生理的特徴を考慮したクラスター数の設定が必要となる可能性がある.今後,他の海域や魚種も含めて知見を蓄積することで,水塊変動・漁況変動の解析に有用なツールとなることを期待する.

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© 2019 一般社団法人 水産海洋学会
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