2019 年 83 巻 3 号 p. 171-180
宮城県長面浦はマガキ養殖が盛んな海域であるが,その高いマガキの生産性を支える栄養塩の供給過程や植物プランクトン生産の維持機構は不明である.本研究では,2014–2015年にかけて,栄養塩濃度と植物プランクトン生産の指標としてクロロフィルɑ(Chl ɑ)濃度の季節変化を調べることで,その維持機構を明らかにした.長面浦のChl ɑ濃度は3月下旬から9月まで高く,特に6月以降に顕著に高い値を示した.高いChl ɑ濃度が観測された3–9月は,長面浦に近接する新北上川の流量が増加することに加え,北東よりの風が吹くことにより,硝酸態窒素とケイ酸態ケイ素を多く含む河川水が長面浦に流入しやすくなるためと推測された.さらに6月以降は長面浦の底層の水温上昇と貧酸素化の影響により,海底から溶出するリン酸態リンとアンモニア態窒素濃度が上昇したことで,植物プランクトンの増殖が促進され,長期間にわたり高いChl ɑ濃度が維持されたと推測された.