世界中を大規模回遊することで知られるまぐろ類は,国際的な水産資源であり,資源量維持のための適切な管理方策の制定が必要不可欠である.そのためには回遊生態に関する詳細な知見が必須であるが,広大な外洋域を回遊するまぐろ類の生態を調査することは困難である場合が多い.そこで,従来利用されてきた技法を補完する手法として注目されている耳石の微量元素・安定同位体比組成を自然指標(natural tag)として用いたまぐろ類の生態研究を紹介するとともに,耳石の自然指標が今後まぐろ類の生態研究にどのようにして新たな知見をもたらすことが可能か,その展望について概説した.