三河湾奥の豊川河口域南部に位置する六条潟では,毎年大量に発生するアサリ稚貝が2003年以降,資源回復を目的として漁業者により大量に採捕され,3,000トン程度が伊勢・三河湾沿岸域に放流されている.しかし,その大量発生機構は十分には解明されていない.そこで,2015年5月から2017年3月と2017年3月から2018年6月の2つのケースで六条潟およびその北部の豊川河口部を中心に調査を行い,出現するアサリ稚貝の個体数・殻長組成の経時的・空間的変化を詳細に調べた.その結果,いずれのケースにおいても春季に急激な個体数の増加がみられた.それは,前年秋季に六条潟に着底し生残していた個体数に比べはるかに多かったことから,採捕の対象となるアサリ稚貝は,主に春季に増加した個体群であると考えられた.この大量に出現した個体の供給源は豊川の感潮域にある可能性が高いと推測され,六条潟および豊川河口部におけるアサリ稚貝の大量発生に大きな役割を果たしていると考えられた.