三河湾東奥部の豊川河口に位置する六条潟では,毎年大量にアサリ稚貝が発生し,漁業者によって採捕され伊勢・三河湾の沿岸域に広く移植されている.しかし,近年秋季から冬季にかけてアサリ稚貝が大量に減耗する現象がみられている.このアサリ資源の減耗要因を明らかにするため,2015年秋季から2017年春季にかけて個体群の推移,採捕圧および食害動物の出現状況を把握するとともに水温,クロロフィルaおよび海底近傍の流れの連続観測を実施した.特に減耗が顕著であった2015年秋冬季について,水温,餌料量を変数とする既往の成長モデルにより成長・生存状況を検討したが,生理的死亡は再現されなかった.風浪に伴う掘り出しによるエネルギー損失も考慮した成長モデルに改良し,成長・生存状況を再検討した.その結果,成長や減耗時期をおおむね再現することができたことから,風浪が顕著な海域においては掘り出しによるエネルギー損失も重要である可能性が示唆された.