2024 年 88 巻 4 号 p. 233-242
茨城県沿岸域におけるカタクチイワシの卵仔魚の出現状況を把握するために,2018–2022年の4–9月に本県沿岸域において卵仔魚の採集調査および海洋観測を行い,本種の卵仔魚の季節的出現と分布特性を調べた.調査期間中,本種の卵仔魚の分布密度は,卵では4–8月,仔魚では5–9月に高い傾向がみられた.また,年や月ごとに違いはあるものの,卵仔魚は岸寄りや調査海域の南部,黒潮フロント周辺に多い傾向がみられた.卵仔魚の分布密度と環境変量との関係を一般化線形モデル解析によって調べた結果,卵仔魚の分布密度と緯度,水温,流速,流向,プランクトン量との間に相関がみられた.卵については,調査海域南部(4月)や岸寄り(4–8月),フロント周辺に好適な水温・餌環境が形成され,産卵が促進された結果と考えられる.一方,仔魚については,産卵の促進に加え,調査海域外からの輸送やフロント周辺への受動的な集積とも関連づけられる.