2025 年 89 巻 1 号 p. 1-16
2011年以降,順応的管理の概念に基づき,みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)はバリ方式と呼ばれる管理方式(MP)によってTACを算定してきた.MPとは,データ収集方法も含め,事前に定めた方式(アルゴリズム)に則り,漁業や資源調査からのデータを用いてTACを算定する漁獲制御ルールであり,管理戦略評価(MSE)というコンピュータを用いたシミュレーション実験を通して不確実性への頑健性や目標達成度を評価して開発される.2017年を最後にバリ方式に必須なデータを得るための科学航空機目視調査が停止されたため,CCSBTは2019年までに代替のデータを用いた後継MP(CTP:ケープタウン方式)を再開発した.本稿では,CTPの開発におけるオペレーティングモデルの構築とMP候補の作成,MP候補間の性能比較と最終選定などのMSEプロセスとCTPの運用状況を概説し,開発の経験から得た教訓や課題を議論した.