沿岸域の地形の違いが砂浜海岸浮遊生態系の生物群集や生物生産に与える影響を調査することを目的として,2022年11月–2023年10月に小浜湾と高浜湾で水温,塩分,栄養塩(溶存態無機窒素DINと溶存態無機リンDIP)およびクロロフィルa濃度,カイアシ類密度,仔稚魚群集を月1回調査した.小浜湾は高浜湾よりも冬期に低水温,夏期に高水温で,いずれの月も低塩分な傾向であった.水温,塩分,湾口からの距離,湾の違いを説明変数とする一般化線形モデル解析の結果,塩分はDIN濃度とDIP濃度に負の影響,カイアシ類ノープリウス幼生密度と未成体および成体密度には正の影響,湾口からの距離は魚類密度と魚種数に負の影響を及ぼしていた.これらの結果は,異なる栄養段階の生物群集の間で,分布密度や生産過程を規定する主要因が異なる可能性を示しており,低次生産と高次生産の変動パターンの関連性が低いことが示唆された.