2025 年 89 巻 3 号 p. 163-180
漁業資源の持続的利用と海洋生態系保全を図るための基礎的知見を得るために,春季の北海道西部日本海・オホーツク海沿岸域における浮遊仔稚魚の出現動向を調べた.2010–2023年(2013, 2017年を除く)の4月にフレームトロールネット採集(平均曳網深度:28.6 m)によって種不明を含む32分類群のべ38,736個体の仔稚魚が採集された.多くの調査年でスケトウダラの採集密度が最も高く,ついでツマグロカジカ属魚類やギスカジカ属魚類の採集密度が高かった.低水温・低塩分水が優占した2014年には,エゾクサウオの採集密度が高く,特異的な分類群組成を示した.採集密度が経年的に変動する分類群もみられ,ウナギガジは経年的に減少した一方,アサバガレイやイシガレイは2015年以降多く出現した.偏正準対応分析により,仔稚魚の分類群組成には対馬暖流,一級河川河口からの距離,曳網深度の影響がみられた一方,局所的な水温・塩分の効果は不明瞭だった.