2025 年 89 巻 3 号 p. 181-193
カツオの鉛直移動に関する知見は漁獲努力量を検討したり,単位漁獲努力量当たりの漁獲量に及ぼす操業場所の影響を取り除いたりするうえで基礎的な情報になる.本研究では,和歌山県沿岸に設置された表層型浮魚礁に蝟集したカツオの鉛直移動をアーカイバルタグを用いて調べた.放流と再捕が同じ表層型浮魚礁であった2020年6月24日放流の9個体では,放流から再捕までの経過期間は3日19時間から10日20時間であった.各個体は昼夜とも91.2%から99.5%の時間,深度20 m未満を遊泳した.夜間と昼間の平均遊泳深度の差は0.3 mから3.7 mと小さかった.一般的に,表層型浮魚礁に蝟集したカツオは1日の多くの時間で深度20 m未満を遊泳し,明確な昼夜の鉛直移動のパターンを示さないと考えられた.腹腔内温度は周囲の水温に関わらず22°C以上であることが多かったことから,代謝維持のための体温を維持していたと考えられる.