晩夏から冬にかけて静岡県下各地域の養鰻池から採捕した外観的には異常の認められないニホンウナギAnguilla japonicaを検査した結果,以下のことが分った。1) 外観的には異常のない健康と見られるウナギでも,秋から冬に向かって鰓と腎臓にえら腎炎病徴に類似した状態が見られるようになった。2) 腎臓に見られた変化は最も進行したものでも既報のえら腎炎罹患魚に出現した病徴に比べて軽微であり,また,鰓のそれよりやや遅れて出現した。3) 鰓の肥厚は鰓弁上の上皮細胞が舌状に増生することにより起こることが確認された。4) これらのウナギでは血漿塩素イオン量の平均値は終始116meq/lを下らなかった。5) これらの鰓および腎臓に起こった変化は越冬期の養殖ウナギに普通に起こる寒冷あるいは絶食,またはその両者とも,に対する反応であるとも推測される。