魚病研究
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養殖ウナギの赤点病に関する研究―IV
原因菌Pseudomonas anguillisepticaの生理学的特性
室賀 清邦中井 敏博沢田 達男
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1977 年 12 巻 1 号 p. 33-38

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抄録
 Pseudomonas anguilliseptica(赤点菌)の塩分および温度に関する生理学的特性を調べ,赤点病発生に関する現場調査から得られた疫学的事実との関係について考察した。1) 本菌の増殖可能pH範囲は5.3~9.7であり,特にpH7~9の範囲で良好な増殖が認められた。2) 本菌はCl 1.9‰以上の希釈海水中ないし海水中(20℃)では200日以上生存した。このことから,赤点病が海水の影響のある地域に多発するのは,そのような養殖池の水に本菌が長期にわたり生存しているためであると考えられた。3) 本菌の増殖可能食塩濃度範囲は0~4%であり,至適食塩濃度は0.5~1%の範囲であった(基礎培地Difco nutrient broth)。4) 希釈海水(Cl 5.6%o)に懸濁された本菌は,27℃以下の温度では40日以上生存したのに対し,30℃以上では7日以内に死滅した。5) 本菌の増殖可能温度範囲は5~30℃,至適温度は15~20℃であり,25℃以上では増殖は明らかに低下した。6) 本菌の運動性は6~20℃の範囲で活発であり,27℃以上になると明らかに低下した。7) 以上の実験結果から,本病が水温20℃以下で発生しやすく逆に27℃以上になると終息するという現象は,主として水温が本菌の生理生態に及ぼす影響の結果によるものであると考えられた。
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© 日本魚病学会
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