魚病研究
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キンギョとコイから得た Trichodina reticulata の形態と生活史について
Abu Tweb Abu AHMED
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1977 年 12 巻 1 号 p. 21-31

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抄録

 日本のキンギョとコイの体表,鰭および鰓の粘液から得られたTrichodina reticulataの詳細な形態と生活史を検討した。体は一般にドーム形で直径50~90μ,体高は15~35μである。吸着盤は直径44~80μ,歯状突起環の直径42~72μ,馬蹄形の大核は22.5~49μ,その厚さは6~7μである。歯状突起の数は24と27が最も多かった(範囲20~31)。各歯状突起当りの線条数は10が最も多かった(範囲7~10)。歯状突起の計測値は以下の通りである:外側突起の長さ4.5~7.5μ,内側突起の長さ5.5~7.5μ,中央円錐部の長さ2.5~4μ,歯状突起の長さ5~11μ。境界膜の幅は3.5~6μである。小核(7~15×2~5μ)は大きく,紡錘形で,大核の右腕の外側の浅いくぼみの中にある。吸着盤の中心部はいくつかの細胞様構造に分かれている。収縮胞および食胞は明瞭である。縁膜は繊細で透明である。運動は縁膜と口外繊毛と小膜によって行なわれる。2本の繊毛帯は通常と同じである。口外繊毛帯は約370°のらせんを形成している。二分裂はまず虫体が拡大することから始まる。次に,大核は短かく厚くなり,クロマチンが任意に分布するようになり,2つの亜鈴形の核に等分する。小核は大きくなり,有糸分裂する。分裂の開始に先だって,新しい歯状突起の原基が旧環と吸着盤の辺縁の間にあらわれる。亀裂が縁膜中にあらわれ,縁膜の下の線条帯中に裂け目ができる。収縮胞は分裂して,各娘細胞に対し,1個の収縮胞を形成する。分裂後,半数の歯状突起を持つ旧環はしだいに消失し,その約2倍の歯状突起が新たにその外側に発達してくる。線条と繊毛も同様にもとの数を有するようになる。同形および異形の接合がしばしば認められた。経接合個体は大きく,1個の機能を有する核,即ち融合核を持ち,それは3回分裂し,8個の小核を形成するが,そのうちの7個は原基であり,1個が小核としての機能を有する。細胞分裂は各娘細胞が1個の大核原基と1個の小核を有するまで続く。この場合,娘細胞の新しい環に形成される歯状突起の数は旧環の時と同じである。

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