魚病研究
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アユのビブリオ病
青木 宙北尾 忠利
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1978 年 13 巻 1 号 p. 19-24

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抄録
 1974年から1977年にかけて全国各地のアユ養殖場よりVibrio anguillarum 259株を集め,各種薬剤sulfamonomethoxine(SA),chloramphenicol(CM),tetracycline(TC),nalidixic acid(NA),nitrofurazone(NF)およびtrimethoprim(TMP)に対する感受性試験を行なった。これら分離259株は,9株の感受性株を除き,1剤(NAまたはNF)から6剤(SA,CM,TC,NA,NF,TMP)耐性を示した。これら耐性250株中165株より伝達性Rプラスミドが検出された。これらアユ養殖場で流行しているV.anguillarumの血清タイプは,O抗原による血清分類では3群に別けることが出来た。本菌感染症の予防の見地から浸漬ワクチン処理法を試みた。すなわち,養殖アユを高張圧溶液(5.32%の食塩水)2分間,次いでV.anguillarumのホルマリン死菌培養液に3分間浸漬した。1ヵ月間飼育後,ワクチン浸漬魚に腹腔内生菌攻撃を行ない,有意な防禦反応が認められた。ホルマリン死菌培養液を遠心し,菌体と上澄液に別けた。菌体は生理食塩水に再浮游させた。養殖アユを5.32%の食塩水に2分間,次いで菌体浮游液または上澄液をそれぞれ3分間浸漬した。1ヵ月間飼育後,それぞれの浸漬処理魚を同様の方法で生菌攻撃を行なったところ,菌体処理魚では防禦反応を示したが,上澄液浸漬処理魚ではまったく防禦反応を示さなかった。さらに,菌体浮游液はアユに対してまったく毒性がなく,1ヵ月間の飼育期間中発死が認められなかった。一方,上澄液はアユに対し強い毒性を示すことがわかった。さらに,凍結乾燥死菌体を5,32%の食塩水に混ぜ,その溶液で3分間浸漬を行なった。飼育1ヵ月後攻撃を行ない,前者と同様に防禦反応を示した。すなわち,浸漬ワクチン処理はアユのビブリオ病の予防に有効であることが判明した。
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