抄録
1. 1980年6~10月に長崎県橘湾に面した養殖場で,飼育されているマアジにへい死を伴う疾病が発生したため,その原因を調査した。2. 病魚は眼球が発赤または白濁していることが多く,さらに症状の進行した個体では突出が生じ,重篤魚では脱落がみられた。3. 罹病魚の諸臓器からは起病性を有する一種のVibrio細菌が純培養的に分離されたことから,本病をビブリオ病と断定した。4. 分離菌は広義の腸炎ビブリオに近似したが,8%NaCl加培地および42℃では発育不能であるため,腸炎ビブリオに包含するには問題があると判断された。5. 本菌の至適pHは6~9,至適温度は28.8~34.0℃および至適NaCl濃度は1~3%であった。6. 本菌は供試した7種類の抗菌剤(OTC・TC・CTC・CP・TP・OX・NF-Na)のすべてに感受性を示した。