抄録
1985年春, 大阪府内の釣堀で飼育中のフナに運動性エロモナス症(Aeromonas hydrophila)が発生した。病魚は体表に糜爛形成と皮下出血, 黄赤色の腹水貯溜, 腸炎を示し, 病魚からの分離菌株は強いβ溶血を呈するのが特徴であった。病理組織学的には, 細菌の組織内侵襲を伴う腸炎, 肝細胞内血鉄素沈着, 脾臓・腎臓での類血素沈着, 血鉄素貧食マクロファージの肝臓・脾臓・卵巣内への浸潤が共通して見られた。臓器内での血鉄素と類血素の沈着は, 病魚体内で激しい溶血が生じたためと判断され, 細菌の溶血素がその原因と考えられた。