1988~1996年の間に, 関東から九州に至る計8府県で種苗生産時における大量死に際して採集された4種のアワビ属稚貝, 計145個体について病理組織学的観察を行った。クロアワビ, エゾアワビ, マダカアワビでは, 主として腹足内の神経幹および末梢神経に形成された異常細胞塊と貝の衰弱との間には密接な関係が認められ, 大量死の主因は筋萎縮症であると判断された。しかし, メガイアワビでは筋萎縮賞の病変は観察されなかった。自然発症および実験感染個体の病変部には光顕・電顕いずれによっても病原体らしき像は観察されなかった。