魚病研究
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養殖ブリ稚魚の細菌性類結節症の研究―I
病徴学及び病理組織学―1
窪田 三朗木村 正雄江草 周三
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1970 年 4 巻 2 号 p. 111-118

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抄録

 1) 昭和44年6月から10月にかけて仮に細菌性類結節症と名づける感染力の強い一種の細菌感染症が全国的にハマチに流行した。2) 感染初期症状は外見的にも,また内部の肉眼観察でも診断しにくく,重症魚も狂奔することなく,小割底に静止し,そのまま死亡とするので発見が遅れるのが本病の一つの特徴である。3) 重症魚では腎臓,脾臓,心臓,肝臓,鰓などに特徴的な大小の白点が作られ,大きい白点は結節化している。またそれらの臓器にはしばしば著しく肥大するものもあり,色調が白味を帯びている。筋組織中に膿瘍ができないという点で本病はノカルジア症と区別できる。4) 病理組織学的に実質臓器中の白点を調べたが,白点には結節,単純な菌集落,小さな菌集落の球面配置によるものなどがある。5) 病原菌は運動性を持たない。呑喰細胞内で増殖し,集落のもとになるし,血管中で大きな集落は栓子になり栓塞を起こす。6) 病原菌は実質細胞中で増殖しない。またそれらの崩壊組織像が見られないことから,この病原菌は蛋白分解酵素を殆んど持たないのではないかと推定された。7) 類結節症とノカルジア症の白点と結節についてそれらの相違点を述べた。8) 化学療法剤の効果が大きいのは生体内における病原菌の血行,間質性の生態と関連があるのではないかと考えられた。

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