抄録
1950 年代には,褐色細胞腫の手術に伴い20 〜45 %の手術関連死が報告されていたが,α1 受容体遮断薬が使用されるようになり,1970 年代には手術関連死が約3 〜4 %まで減少し,近年の画像診断の進歩に伴いさらに手術関連死は減少しているが,内科医,外科医,麻酔科医の連携が重要である.副腎皮質腫瘍に対する腹腔鏡手術は,その低侵襲性により標準術式となってきた.褐色細胞腫も例外でなく,直径6 cm までの腫瘍に対しては,腹腔鏡手術のほうが,侵襲が少なく安全に施行できるとする報告が多い.遺伝性褐色細胞腫は,悪性褐色細胞腫の頻度や腫瘍が多発する頻度が原因疾患ごとに異なるため,原因疾患ごとに分けて考える必要がある.MEM2,VHL,PGL1 の様な悪性例は少ないが多発する褐色細胞腫に対しては,積極的に副腎温存を図り,長期間のステロイドホルモン補充や急性副腎不全を生じることがないよう慎重な判断が必要である.