家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
特集2:家族性大腸癌診療における標準化の意義と課題
Lynch 症候群のサーベイランスにおける大腸内視鏡および上部消化管内視鏡による病変の発見頻度と病理学的所見に関する検討
新井 正美 小川 大志千野 晶子倉岡 賢輔山本 頼正藤崎 順子五十嵐 正広上野 雅資藤本 佳也黒柳 洋弥大矢 正敏比企 直樹福永 哲大山 繁和佐野 武加藤 薫土田 知宏元井 紀子鹿取 正道山本 智理子加藤 洋石川 雄一山口 俊晴武藤 徹一郎
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2010 年 10 巻 1 号 p. 32-38

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抄録
【目的】Lynch 症候群患者のサーベイランスにおける大腸内視鏡検査(CS)および上部消化管内視鏡検査(UGI)における有所見率および病理学的所見を比較検討して,その意義を考察する.【対象と方法】2009 年12 月時点で癌研有明病院にて2 年間以上Lynch 症候群としてサーベイランスを行っている42 例を対象とした.サーベイランスの所見を2005 年まで遡り,過去5 年間の腫瘍の発生率や発生した腺腫や癌の臨床的および病理学的特徴を検討した.【結果と考察】対象者のフォローアップ期間内に大腸癌5 例(7 病変),胃癌4 例(5 病変),十二指腸癌2 例(2 病変)を認めた.また大腸腺腫を57 病変確認し内視鏡的に摘除した.1 回あたりの内視鏡検査における癌の発見リスクはCS で3.1 %, UGI で4.2 %であり,大腸癌の発見リスクはむしろ胃癌や十二指腸癌の発見回数よりも低くなっており,年1 回のCS により,大腸腺腫を摘除することによる大腸癌発生リスク低下の効果を示すものと考えられた.内視鏡切除で治療を完結できなかった大腸癌はいずれも前回内視鏡から2 年以上経過していた症例であり,年1回のCS は妥当な検査間隔と考えられる.一方,上部消化管内視鏡では年1 回実施していても,発見された粘膜内胃癌は4 例中1 例のみであり,内視鏡治療が可能な段階で早期発見は難しいと考えられる.しかし,サーベイランスとして上部消化管癌に対して生命予後改善を目的に実施するのであれば年1 回UGI を施行する必要があると思われた.
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© 2010 The Japanese Society for Familial Tumors
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