抄録
現在判明している家族性子宮体癌は,ほとんどがリンチ症候群に属する.本稿では「見逃してはいけない家族性腫瘍」という観点から家族性子宮体癌を紹介する.リンチ症候群では子宮体癌患者を発端に見つかる家系も多く,近年「センチネル癌」としての子宮体癌が注目されている.この点から,リンチ症候群の発見に果たす婦人科医の役割は重要であるが,婦人科医における同症候群の認知度は必ずしも高くない.現在,関係する学会において,新アムステルダム診断基準の周知等が図られている.リンチ症候群では大腸癌と子宮体癌を重複発生する患者が多く,異時性重複では両癌の初発頻度はほぼ同等である.第2 癌診断までに,婦人科と消化器科の間で患者情報を共有することが重要だが,現状では有効な連携システムが機能しているとは言えない.子宮峡部から発生する癌とリンチ症候群の関連や,リンチ症候群の子宮体癌ではhMSH6 の関与が大きい点などが最近報告されている.これらの研究が進むことで,リンチ症候群における発癌メカニズムの更なる解明が期待される.