家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
特集:見逃してはいけない家族性腫瘍
見逃してはいけない家族性腫瘍家族性前立腺癌の臨床
大竹 伸明 中田 誠司鈴木 和浩山中 英壽鈴木 慶二深堀 能立
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2011 年 11 巻 1 号 p. 5-10

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抄録
われわれは1994 年より,一家系に複数の前立腺癌患者のいる,家族性前立腺癌について検討を行っている.われわれの提唱した定義により,遺伝性前立腺癌42 家系139 人(一家系に3 人以上の前立腺癌患者,H 群),家族性かつ非遺伝性前立腺癌219 家系438 人(一家系に2 人の前立腺癌患者,F 群),散発群11,664 人(S 群)の3群で比較検討したところ,診断時年齢でH 群,F 群ともS 群より有意に若く,H 群はF 群よりさらに若かった.また前立腺癌特異生存率でH 群,F 群がS 群に比べて予後が悪かった.1997 年にわれわれは一家系に2 人(親子または兄弟)の前立腺癌患者のいる家系の正常男性家族20 人に対してPSA によるスクリーニングを施行したところ,20 人中5 人が基準値4 ng/ml を上回っており,3 年の経過で5 人全員から前立腺癌が発見された.最終的な癌発見率は25%(5/20)となり,家族性前立腺癌家系のPSA スクリーニングの重要性が示された.われわれは家族性前立腺癌家系を確定するのに,必ず病理組織学的診断を一人の病理医が行っている.患者から得られた情報が病理学的にどのくらい確定できたか調査したところ,259 件中195 件(75.3%)に過ぎなかった.病歴聴取のみでなく,病理学的所見の確認が重要であると考えられた.
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© 2011 The Japanese Society for Familial Tumors
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