抄録
広島大学病院内視鏡診療科において家族性大腸腺腫症(FAP)患者の大腸ポリープに対して内視鏡的摘除を繰り返し,経過観察した8 例(平均年齢は29.9 歳,男女比は3:5)を経験したのでその治療成績について報告した.治療件数はのべ32 件,1 症例あたりの平均治療件数は4.0 件,総ポリープ摘除数は1,056 個で,切除標本の組織型は腺腫内粘膜内癌2 個,腺腫1,054 個であった.1 症例あたりの平均ポリープ摘除数は132 個,1 回あたりの平均ポリープ摘除個数は33 個であった.偶発症は,後出血1 例,遅発性穿孔1 例の計2 例に認めた.後出血例は全例内視鏡的止血術で止血可能であったが,遅発性穿孔例は緊急手術を要した.平均観察期間は23.6 か月で,経過観察中に大腸癌は1 例も認めなかった.