家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
13 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
総説
  • 増田 健太, 阪埜 浩司, 矢野倉 恵, 小林 佑介, 辻 浩介, 木須 伊織, 植木 有紗, 野村 弘行, 平沢 晃, 進 伸幸, 青木 ...
    2013 年13 巻1 号 p. 1-5
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル オープンアクセス
    子宮体癌は子宮体部や底部から発生することが一般的であるが, まれに体部下部から頸部上部, つまりlower uterinesegment(LUS)もしくは峡部と呼ばれる領域から発生する子宮体癌が存在する. 子宮峡部から発生する子宮体癌(以降, 子宮峡部癌)は子宮体癌全体の3 〜3.5%とまれであり, これまで小規模の報告しか存在しない. 近年, 子宮峡部癌が遺伝性腫瘍であるLynch 症候群との関連があると報告され注目されている. 一般的な子宮体癌でのLynch 症候群の頻度は1 〜2 %といわれているが, 米国の報告によると子宮峡部癌のうち29%がLynch 症候群とされ, 高頻度にMSH2 の変異が存在するとしている. 今後わが国をはじめ, より大規模な調査において子宮峡部癌の臨床病理学的特徴やLynch 症候群との関連についてさらに検討する必要がある.
特集:家族性大腸腺腫症の最先端
  • 松本 主之, 石川 秀樹
    2013 年13 巻1 号 p. 6-
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル オープンアクセス
  • 松原 長秀, 小林 政義, 濱中 美衣, 久野 隆史, 山岸 大介, 塚本 潔, 山野 智基, 野田 雅史, 田村 和朗, 冨田 尚裕
    2013 年13 巻1 号 p. 7-9
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル オープンアクセス
    Polyposis staging system is a need to develop a consensus regarding categories of increasing polyposis severity because in advance to the ultimate surgical intervention (total colectomy) we already have or will have a choice of variety of interventions such as endoscopic and chemopreventive interventions. A given category of adenomatosis severity should carry with it a corresponding intervention, so as the aggressiveness of intervention increasing as stage increases. The “clinically significant” should only be considered as an improvement in stage or delay in worsening of stage. This is a preliminary polyposis staging system under preparing by the International Society of Hereditary Gastrointestinal Tumors (InSiGHT). It is hoped that this would enable a gradual move toward adoption of standardized, evidence-based approaches to polyposis staging and treatment.
  • 谷内田 達夫, 野中 哲, 中島 健, 中村 佳子, 鈴木 晴久, 吉永 繁髙, 小田 一郎, 山本 聖一郎, 藤田 伸, 赤須 孝之, 斎 ...
    2013 年13 巻1 号 p. 10-16
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル オープンアクセス
    [目的]十二指腸癌は,大腸癌以外のFAP の主要な死因であるとされており,当院のFAP における十二指腸病変に対する現況を検討した.[方法]1997 年以降に上部消化管内視鏡検査(EGD)が施行されているFAP 80 例を対象に,患者背景,十二指腸病変の内視鏡診断,治療方法,長期経過を検討した.[結果]十二指腸腺腫(乳頭部除く)は51%(41 例),十二指腸癌は6%(5 例)に認められ全例腺腫を合併していた. 十二指腸腺腫は88% (36 例)で経過観察され,11%(4 例)にEMR が施行され,1 例は癌,腺腫の同時多発例で手術が施行された.経過観察例の8%(3/36)はのちに十二指腸癌が検出された.十二指腸癌5 例のうち,2 例はEMR にて一括切除が施行された.1 例は手術が施行され,2 例は患者事情により経過観察された.十二指腸病変を有する症例のうち2 例で死亡がみられたが十二指腸癌による死亡はなかった(観察期間中央値9.0 年).Spigelman の分類ごとでは経過観察中のIV 期の症例8 例のうち4 例でのちに癌の検出がみられた.[結論]十二指腸病変による死亡は認められず,予後は良好であった.またSpigelman の分類の有効性が示唆された.
  • 田近 正洋, 丹羽 康正, 近藤 真也, 田中 努, 水野 伸匡, 原 和生, 肱岡 範, 今岡 大, 永塩 美邦, 長谷川 俊之, 大林 ...
    2013 年13 巻1 号 p. 17-22
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】家族性大腸腺腫症(FAP)は,予防的大腸切除術が行われるようになり死亡率は低下した.しかし近年,大腸全摘術後に造設された回腸pouch への腺腫の再発や癌化例が報告されるようになり,新たな問題となっている.今回,回腸pouch への腺腫および癌の発生について検討した.【方法】対象は当院で内視鏡的に経過観察を行えたFAP 患者28 家系40 症例.手術の内訳は,大腸全摘・回腸嚢造設術(Kock): 8 例,結腸全摘・回腸直腸吻合術(IRA):8 例,大腸全摘・回腸嚢肛門管吻合術(IPAA):24 例.内視鏡検査は原則6 〜12 か月間隔で行い,KockとIPAA をpouch 群とし,pouch を有さないIRA 群と臨床所見を比較検討した.【結果】観察期間は中央値で17.7年,経過中pouch 群で4 例が死亡した.直腸への腺腫の再発はIRA で8 例全例に認めた.回腸への腺腫はpouch群で20 例(62.5 %)とIRA 群の0 例に対し有意に多く発生した(P < 0.01).また,癌をpouch 内に3 例認めた.pouch 群およびIRA 群の累積腺腫発生率はそれぞれ5 年: 10 %,10 年: 45 %,20 年: 90%と5 年:50 %,10 年: 75 %,20 年: 100%で,IRA 群で高かった(P < 0.05).【結論】大腸全摘後の回腸pouch には,IRA での直腸と同様に高頻度に腺腫,さらには癌の発生を認めるため,術式にかかわらず術後の内視鏡を用いた下部消化管のサーベイランスは不可欠である.
  • 中土井 鋼一, 岡 志郎, 田中 信治, 西山 宗希, 林 奈那, 寺崎 元美, 金尾 浩幸, 茶山 一彰
    2013 年13 巻1 号 p. 23-27
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル オープンアクセス
    広島大学病院内視鏡診療科において家族性大腸腺腫症(FAP)患者の大腸ポリープに対して内視鏡的摘除を繰り返し,経過観察した8 例(平均年齢は29.9 歳,男女比は3:5)を経験したのでその治療成績について報告した.治療件数はのべ32 件,1 症例あたりの平均治療件数は4.0 件,総ポリープ摘除数は1,056 個で,切除標本の組織型は腺腫内粘膜内癌2 個,腺腫1,054 個であった.1 症例あたりの平均ポリープ摘除数は132 個,1 回あたりの平均ポリープ摘除個数は33 個であった.偶発症は,後出血1 例,遅発性穿孔1 例の計2 例に認めた.後出血例は全例内視鏡的止血術で止血可能であったが,遅発性穿孔例は緊急手術を要した.平均観察期間は23.6 か月で,経過観察中に大腸癌は1 例も認めなかった.
  • 石川 秀樹
    2013 年13 巻1 号 p. 28-31
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル オープンアクセス
    アスピリンによる大腸癌化学予防研究の現状を紹介するとともに,私たちが行った臨床試験(J-FAPP Study Ⅱ)の結果を報告した.本試験は,家族性大腸腺腫症患者を対象に,低用量アスピリン腸溶錠(1 錠100mg/day)による大腸腺腫予防効果を二重盲検無作為割付臨床試験にて評価する研究であり,試験薬投与期間は6 から10 か月間である.試験期間途中に巨大な吻合部潰瘍の患者と顕著な貧血を呈した患者を認めたため,その後のエントリーを中止した.試験が完遂されたのは34 人(アスピリン群,プラシーボ群ともに17 人)である.大腸ポリープの減少を認めた者は,有意差はないもののアスピリンで相対有効率(95%信頼区間)2.33(0.72 〜7.55)と多い傾向であった.層別解析において,腫瘍の平均径が2mm 以下,女性,40 歳以下,非喫煙,非飲酒,APC 遺伝子変異保有,βカテニン染色陽性,上皮内COX-2 染色陽性の群でアスピリンのポリープ縮小効果が強い傾向があった.有害事象を認めた者は3 人(18%)であり,全員アスピリン群であった.有害事象を認めた者は,アスピリンによる大腸ポリープ縮小効果を示す可能性のある特徴と同じであった.これらのことより,家族性大腸腺腫症に対してアスピリンは小さな大腸腺腫を縮小する効果はもつが,有害事象の発生頻度は一般人に比して高く,臨床応用するためにはさらなる検討が必要と考えられた.
解説
  • 田村 和朗, 金 相赫, 喜多 瑞穂, 石川 真澄, 伊田 和史, 鵜飼 篤史
    2013 年13 巻1 号 p. 32-34
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル オープンアクセス
    家族性肥厚性皮膚角化症・食道癌症候群(TOC)/ Howel-Evans 症候群は常染色体性優性遺伝性疾患で,掌蹠角化症,口腔内白板症,食道癌のハイリスク群として知られている.これまでの研究を通してTOC の原因遺伝子の座位は17q25.1–q25.2 に絞り込まれていた.2012 年,シークエンスキャプチャーアレイ技術を用い,本症家系の患者にRHBDF2 遺伝子のミスセンス変異が検出された.RHBDF2 はrhomboid と呼ばれる7 回膜貫通型タンパクに属するが,その機能はまだ未解明の部分が多い.現在のところEGF シグナル伝達系を標的とし,その活性を制御していると考えられている.変異RHBDF2 タンパクは機能を獲得しており(gain-of function),細胞内のEGFRシグナル伝達を維持することで過剰増殖につながると考えられている.さらにTOC 患者では制御を欠いた創の修復が食道など上部消化管の上皮に前癌病変を発生させるとの仮説が報告された.TOC のみならず散発性食道癌においても同様の生物学的特性が観察されたことから,現在行われているEGFR を標的とした治療薬に抵抗性を示すことも懸念され,今後,RHBDF2 による制御伝達系を標的とする新たな治療薬の開発が期待される.
関連集会報告
feedback
Top