抄録
大腸癌研究会を中心としたわが国における遺伝性大腸癌の研究の歴史と今後の展望について述べた. 1976 年に東京医科歯科大学にポリポーシス解析センターが設立され,消化管ポリポーシスの登録が開始された.その後,活動の中心が大腸癌研究会のポリポーシス委員会に移され,家族性大腸腺腫症を中心に国内外に多くの重要な知見を発信した.2006 年にポリポーシス委員会とHNPCC 第2 次プロジェクト研究委員会が合同して家族性大腸癌委員会となった.2012 年の遺伝性大腸癌診療ガイドライン発刊後の本委員会の活動のコンセプトは,オールジャパンの体制で遺伝性大腸癌の研究基盤を構築することである.2014 年1 月現在,研究対象を家族性大腸腺腫症とリンチ症候群に絞り,家族性大腸腺腫症に対する後方視的多施設共同研究と,HNPCC 第2 次プロジェクトの論文化を中心に活動している.日本家族性腫瘍学会の協力を得て遺伝性大腸癌診療ガイドラインが作成されたように,今後も大腸癌研究会と日本家族性腫瘍学会の緊密な連携が必要である.