抄録
リンチ症候群(LS)は結腸直腸癌と子宮体癌(EC)をはじめとした多種の関連癌が高頻度に発生する常染色体優性遺伝の症候群であり,DNA ミスマッチ修復(MMR)遺伝子の生殖細胞系列変異を主な素因とするMMR機構の障害によって発症する.ECでのLS識別は後続する関連癌の予防や早期診療において意義を持つが,最適な識別法や管理法は定まっていない.ECにおけるLSのスクリーニング戦略について,当科の研究成果と併せて解説する.高感度の臨床基準に分子学的評価を組み合わせたスクリーニング手順は,LSの識別効率を高め費用を抑制する戦略であると考える.