抄録
ワンド(湾処)とは河川に沿って氾濫原に湾入して形成される静水域であり、近年ではダムの造成による河川流量の安定化や、河川環境の修復によりワンドの数は増加している。ワンドの機能として水生生物の生息域となることが知られている。一方で、ワンドの化学的な水質とその形成要因については明らかになっておらず、特にリンや窒素といった生元素の濃度変動要因を明らかにすることは、河川生態系の一次生産を評価する上で重要である。そこで本研究では、ワンドに供給される水に注目し、ワンド湧水部222Rn 濃度や水素・酸素安定同位体比(δD、δ18O)を用いて水循環解析をおこない、並行して各種溶存イオン濃度や生元素濃度を測定することで、ワンドの生態系機能を水質化学的側面から評価した。