抄録
遺伝子診断は,被検者のアイデンティティに深くかかわる情報を明らかにするものであり,また不変性,共有性,予知性といった特殊性を持つ遺伝学的情報を取り扱うものであることから,その実施に際しては倫理的配慮が必要である.原則としては,遺伝子診断に際して被検者本人によるインフォームド・コンセントが必須となる.しかしながら,未成年者に対して遺伝子診断を行う際には,同意能力が十分ではないことから,被検者本人の自己決定ではなく,親の代諾によって遺伝子診断の実施の決定がなされることとなる.この場合,親は何を基準に判断をすればよいのか,どのような倫理的配慮が必要であるのかについて,慎重に検討しなければならない.また,家族性腫瘍研究への未成年者の参加についても,より慎重な議論が必要である.