抄録
家族性腫瘍の多くは成人発症性であるために,若年者における遺伝子診断を実施することは,倫理的問題がある.特にその子どもが成人後に自身の意思で遺伝子診断を受けるかどうかを決める権利を奪うことになるとして,しばしばその是非が議論の対象となる.若年者の遺伝子診断を行ってよいとするかどうかを判断するには,生命倫理学的な見地から,診断を行うことのメリット,デメリットを考えることが大切である.しかし,その判断が容易でないグレーゾーンの状況で,個々のケースにおいて結論を出すにはどうしたらよいのだろうか.本稿では,遺伝カウンセリング的な立場に立って,若年者の遺伝子診断を実施するかどうかをどのように考えればよいか,またそれを患者・家族とどのように話し合っていくべきかを述べた.