家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
特集 : 網膜芽細胞腫の遺伝カウンセリング
網膜芽細胞腫の分子遺伝学
村上 善則
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ジャーナル オープンアクセス

2004 年 4 巻 2 号 p. 59-63

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抄録
網膜芽細胞腫(retinoblastoma)は,網膜細胞より発生する小児の悪性腫瘍で,発生頻度は出生約 15,000 人に一人,第 13 染色体q14 上のRB1 遺伝子の2 ヒットの不活化を原因として発生する.その約 30% が両眼性,約 70%が片眼性であるが,両眼性症例全例と片眼性症例の 10 〜15%,合わせて全症例の約 40% はRB1 遺伝子の生殖細胞性の変異をもつ遺伝性症例であり,常染色体性優性の遺伝形式をとる.疾患の浸透率は約 90% である.早期治療が行われた場合の治療成績は極めて良いが,数年後から二次性腫瘍として骨肉腫や軟部組織肉腫が高率に発生することが知られ,網膜芽細胞腫に対して放射線治療が行われた場合に特にその発生が増加することから問題になっている.最近では,遺伝性網膜芽細胞腫の鑑別や,血縁者の保因者診断を目的として,RB1 遺伝子を標的とした遺伝子検査が実用化されている.末梢血リンパ球 DNA あるいは mRNA を用いたRB1 遺伝子の塩基配列決定,FISH 法による大規模な遺伝子欠失の検出を併用することにより,70 〜80%の変異を検出することが可能で,臨床的に有用である.
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© 2004 The Japanese Society for Familial Tumors
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