抄録
外来での看護相談,大学病院の遺伝相談外来,家族性大腸腺腫症の患者会活動における経験から,家族性腫瘍の人々への支援の現状と課題について,看護の立場から検討した。状況に応じた支援が必要であり,「初めて家族性腫瘍と向き合う」時には,適切な情報提供と共に,患者や家族がどのような反応を示しているのかに気付くことが重要である.「検査や治療を活用していく」「家族内で情報を共有していく」段階では,実施に伴う負担を可能な限り軽減していくことが,生涯にわたる,世代を超えた医療の活用を可能にする.また,学業や仕事,結婚や出産等「さまざまなライフステージにおいて」情報を提供しながら意思決定を支えていくことが必要となる。そのようなプロセスは個別性が高く複雑であり,現状の蓄積と共に遺伝カウンセリングができる体制の整備が必要である.看護の立場からは,患者・家族の状況を多角的に捉えて,その状況に応じた支援を提供していくための直接的,あるいは調整的な役割を果たす責務がある.