2022 年 34 巻 1 号 p. 69-76
花粉管は卵細胞へと精細胞を輸送する被子植物の生殖組織である.これまで,伸長する花粉管の中で先端に存在する細胞核が,花粉管の伸長や胚珠への方向制御をつかさどると考えられてきた.しかし今回,我々のグループはこうした常識を覆し,花粉管において細胞核が先端側に無くとも,胚珠へとたどり着く能力を保持していることを明らかにした.本総説ではこの発見を含む,花粉管の方向制御に関する近年の話題を中心にして,花粉管の細胞生物学における今後の研究展開の可能性について論じる.