抄録
症例は34 歳の女性で,下痢を主訴に近医を受診.下部消化管精査により家族性大腸腺腫症(familial adenomatouspolyposis ; 以下,FAP)と診断された.さらに遺伝子診断でもAPC 遺伝子の変異を認め,手術目的に当科紹介となった.手術は低侵襲性と機能温存,さらに整容性を重視した腹腔鏡補助下大腸亜全摘・直腸反転法による回腸嚢肛門管吻合術を施行した.本術式は肛門管を直視下に確認し正確に温存するileo anal canal anastomosis(IACA)が可能であった.さらに腹腔鏡手術の短所とされているより低位での直腸切離を,直腸を反転することにより一回のステープリングで完結でき,安定したdouble stapling technique anastomosis(DST)吻合で一期的手術が可能であった.術後経過は良好で合併症なく退院し,術後18 か月経過した現在の排便回数は一日6 回で漏便はない.FAP に対する本術式は,低侵襲でしかも安全で,QOL の面においても優れた術式であると考えられた.