抄録
オーダーメイド医療は各個人に対して最適な治療薬を最適な量だけ投与することにより,より安全で効果的な医療を提供しようとするものである.このオーダーメイド医療の第一歩は,薬剤の効果や副作用を予測することに始まる.薬剤の効果の有無や副作用の有無には個人差が見られるが,この個人差には遺伝的要因が関わっている.いくつかの抗癌剤については重篤な副作用に関連する遺伝的変異が報告されている.また,2005 年6 月,FDA はアメリカで販売されるイリノテカンの添付文書に,副作用との関連が高い遺伝子変異についての情報を追加し,このような変異をもつ患者への投与に際しては注意するよう促している.このことは遺伝情報を用いた治療の個別化がまさに始まろうとしていることを意味する.本稿では抗癌剤の副作用に関連する遺伝的変異・多型について概説したい.