家族性腫瘍
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7 巻, 1 号
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特集 1 : わが国の HNPCC 研究−基礎と臨床−
  • 石岡 千加史, 竹之下 誠一
    2007 年7 巻1 号 p. 1-
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
  • 古川 洋一, 吉田 輝彦, 中村 祐輔, 森谷 宜皓
    2007 年7 巻1 号 p. 2-7
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    大腸癌研究会では2002 年9 月より,胃癌をHNPCC 関連腫瘍に含めたアムステルダムII 基準を満たすHNPCC患者および保因者を対象として,「HNPCC の登録と遺伝子解析プロジェクト」を開始した.このプロジェクトに登録されたHNPCC 大腸癌患者は,照合した施設の全大腸癌患者の約2.1 %であった.さらに遺伝子解析に対するインフォームド・コンセントが得られた85 症例に対し遺伝子解析を行った.これらの患者の大腸癌発生部位は,右側大腸(盲腸・上行結腸・横行結腸)が47.9 %で,一般大腸癌の28.3 %に比べて有意に頻度が高かった.粘液癌の頻度もHNPCC 大腸癌では8.4 %で,一般大腸癌の3.4 %に比べて有意に多かった.遺伝子解析は,MLH1,MSH2,MSH6 遺伝子の全コーディング領域について,PCR ・ダイレクトシークエンス法,RT-PCR 法,およびMLPA 法により異常を検討した.その結果,約54 %の症例に病的変異を認めた.これらの結果は,日本におけるHNPCC の頻度,臨床病理学的特徴を理解し,正しい診断と,患者および保因者に対してより適切な医療サービスを提供するために役立つであろう.
  • 下平 秀樹, 高橋 雅信, 石岡 千加史
    2007 年7 巻1 号 p. 8-10
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    われわれはDNA ミスマッチ修復タンパク質MLH1 の1 アミノ酸置換によって生ずる機能障害を実験的に評価し,HNPCC 発症リスクを予測するための基盤となる結果を蓄積してきた.本研究では101 個のMLH1 変異体の機能評価をし,疾患発症リスクが高い変異体と低い変異体に分類した.また,p73 依存性アポトーシス誘導に関するMLH1 変異体の影響を調べ,抗癌剤感受性に関連する機能のレベルを解析した.ミスマッチ修復遺伝子変異の機能診断として,単一の機能に関して多くの変異を解析すること,およびある変異体のもつ複数の機能に関して評価をするという二つのアプローチを行った.
  • 松原 長秀, 永坂 岳司, 田中 紀章
    2007 年7 巻1 号 p. 11-14
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    大腸癌の中には親から子へと受け継がれる遺伝性疾患がある.このうちもっとも頻度の高いリンチ症候群では原因遺伝子が明らかになってきているものの,すべてに遺伝子変異が見つかる訳ではない.その他の補助的な診断法を用いて境界領域をできるだけ狭め,より迅速に簡便に疾患を絞り込む工夫が臨床的には非常に大切である.同時に,異なった症候群が隠れている可能性を常に念頭において診断が進められなくてはならない.
  • 阪埜 浩司, 進 伸幸, 矢野倉 恵, 平沢 晃, 塚崎 克己, 青木 大輔, 三木 義男, 野澤 志朗
    2007 年7 巻1 号 p. 15-18
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    子宮体癌の一部は家族性腫瘍である遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)に関連し,MMR 遺伝子の生殖細胞変異により発生すると考えられている.家族性子宮体癌に関しては,その病態も不明な点が多く,有効なスクリーニング法も確立されていない.今回我々は,家系内癌集積性や重複癌を有する子宮体癌36 症例に注目し, 病態解明を目的として3 種のMMR 遺伝子(hMLH1, hMSH2, hMSH6)の生殖細胞変異を解析した.その結果,36 例中6例(16.6%)でMMR 遺伝子の生殖細胞変異を認めた.変異を有する症例のうちhMSH6 遺伝子のフレームシフト変異が3 例と最も高頻度であった.変異を有する6 症例はいずれも現在のHNPCC の臨床診断基準を満たしていなかった.HNPCC と診断されないさらに多くの家族性子宮体癌が存在し,その発癌にhMSH6 遺伝子変異が特に重要であると示唆された.子宮体癌患者の家系内の癌集積性に注目することで効果的にMMR 遺伝子の生殖細胞変異を発見することができる.
特集 2 : 遺伝カウンセリング
総説
  • 竹田 明彦, 伴 慎一, 田淵 悟, 合川 公康, 篠塚 望, 小山 勇
    2007 年7 巻1 号 p. 30-35
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    家族性大腸腺腫症(FAP)における胃病変の合併は比較的高頻度で,多くの家系に出現する.FAP に合併する胃病変には胃底腺ポリープ,腺腫,癌がある.胃底腺ポリープは病理学的に過誤腫に分類され,最も高頻度に発生する胃病変である.最近,長期観察中にポリープの一部が異形成を起こして胃発癌を誘発したと考えられる報告がなされた.腺腫の発生は幽門前庭部に集中し,より若年層から発症ししかも多発傾向が強い.肉眼形態や組織像は通常の胃腺腫と変わりなく,腺腫の癌化についても特有の現象ではない.胃癌の合併率は約5 %程度との報告が多い.前庭部を中心に早期癌から高度進行癌まで組織型,深達度ともにさまざまであるが,明確な発癌機序は不明である.今回明らかなFAP 家族歴を有する51 歳女性の多発肝転移を伴う高度進行胃癌症例を経験した.胃癌の発生部位は周囲に全くポリープや腺腫を認めない胃体上部で,癌周囲の正常胃粘膜内に異型細胞領域が散在性に存在し,p53 およびcytokeratin7 の発現が二重染色にて確認された.以上より胃癌発生のメカニズムとして正常胃粘膜内に巣状に出現した異型細胞領域において,p53 およびcytokeratin 7 の発現を介した発癌機転が推察された.
  • 廣田 誠一
    2007 年7 巻1 号 p. 36-40
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    Gastrointestinal stromal tumor(GIST)とカハールの介在細胞(Interstitial cell of Cajal; ICC)にc-kit 遺伝子産物(KIT)などのいくつかの分子が共通して発現していることは,GIST がICC 由来の腫瘍であることを示し,GIST の大部分にc-kit 遺伝子の機能獲得性突然変がみられることは,GIST の発生・進展にc-kit 遺伝子が関与していることを示している.Germline にc-kit 遺伝子の機能獲得性突然変異を持つ家系の患者にICC の過形成を基盤としたGIST の多発がみられるという事実は,二つの可能性を裏付けるものと考えられる.また,一部のGIST の発生・進展にはPDGF レセプターα遺伝子の機能獲得性変異が関与していることも明らかにされている.KIT の活性阻害薬であるイマチニブが多くのGIST 患者に有効であり,c-kit 遺伝子・PDGF レセプターα遺伝子変異のタイプと有効性との関係が明らかにされ,GIST 患者における遺伝子変異の検索が重要視されている。
  • 水谷 修紀
    2007 年7 巻1 号 p. 41-48
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
解説
  • 磯村 実, 三木 義男
    2007 年7 巻1 号 p. 49-53
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    オーダーメイド医療は各個人に対して最適な治療薬を最適な量だけ投与することにより,より安全で効果的な医療を提供しようとするものである.このオーダーメイド医療の第一歩は,薬剤の効果や副作用を予測することに始まる.薬剤の効果の有無や副作用の有無には個人差が見られるが,この個人差には遺伝的要因が関わっている.いくつかの抗癌剤については重篤な副作用に関連する遺伝的変異が報告されている.また,2005 年6 月,FDA はアメリカで販売されるイリノテカンの添付文書に,副作用との関連が高い遺伝子変異についての情報を追加し,このような変異をもつ患者への投与に際しては注意するよう促している.このことは遺伝情報を用いた治療の個別化がまさに始まろうとしていることを意味する.本稿では抗癌剤の副作用に関連する遺伝的変異・多型について概説したい.
調査報告
  • 山本 佳世乃, 仲島 晴子, 土橋 文枝, 片桐 三枝子, 新井 良子, 田村 智英子, 赤木 究
    2007 年7 巻1 号 p. 54-58
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    遺伝性腫瘍は家族集積性や多発がん,若年発症などの特徴を有するため,家族内の医療費負担は非常に大きいと推測される.今回,私たちは遺伝性腫瘍を対象とした公的医療費助成制度の現状を調査し,その実態を明らかにした.その結果,18 歳未満までは小児慢性特定疾患により,遺伝性の有無にかかわらず,すべての悪性新生物が医療費助成制度の対象と成りうるが,成人以降で対象となるのは,特定疾患の中の神経線維腫症Ⅰ型/Ⅱ型(常染色体優性),再生不良性貧血の中に含まれるファンコニー貧血(常染色体劣性),原発性免疫不全症候群の中に含まれる毛細血管拡張性運動失調症(常染色体劣性),X 連鎖性リンパ増殖症候群(X 連鎖劣性)のみであった.また,各都道府県における独自の助成制度においては,東京都のみで母斑症が認められており,この中に結節性硬化症,vonHippel-Lindau 病,家族性皮膚基底細胞がん(いずれも常染色体優性)が含まれていた.このように,成人以降の遺伝性腫瘍に対する医療費助成制度はほとんど整備されておらず,早急な対応策が必要である.
関連集会報告
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