抄録
家族性腫瘍研究における症例報告のあり方について,①患者(および患者の血縁者等)の個人情報保護,および②学術研究における倫理性の確保,という二つの観点から検討した.個人情報保護に関する本邦の公的ルールの下では,匿名化の処理を行えば,本人の同意を得ずに症例報告を行うことが許容される.しかしながら,研究の倫理性の確保という観点からは,同意取得を回避する手段としての匿名化は望ましくない.症例報告に当たっては,原則として本人の同意を取得する必要があり,その上で患者のプライヴァシーを保護するための配慮として匿名化の措置が行われるべきである.