抄録
福島県立医科大学の器官制御外科学講座では,家族性腫瘍ネットワークの東北地方拠点施設として,「がんの遺伝外来」を行っている.多発性内分泌腫瘍症など多臓器にまたがる疾患の場合,カウンセリングや遺伝子検査のみならず,さまざまな方面での調整を図るコーディネータ的役割も必要となってくるため,遺伝カウンセリングも多角的なアプローチが要求されている.こうしたことを踏まえ,当講座では,家族性腫瘍カウンセリングの養成をうけた非医師職(看護職)が外来に加わり,医師と共に遺伝カウンセリングを行っている.非医師職が加わりチームアプローチが可能になることで,遺伝子診断の意思決定から,その後の予防・早期発見にむけて,患者の心身両面の支援体制を整えることができる.これは今後の患者のQOL 維持にも大きく影響すると考えられる.今回は福島県立医科大学医学部附属病院における「がんの遺伝外来」での遺伝カウンセリングの取り組みを紹介しつつ,遺伝外来におけるチームアプローチの重要性について述べる.