抄録
自脱コンバイン(以下,コンバイン)事故の現状を明らかにし,効果的な対策を見出すため,農業者調査を基に事故の原因分析を行った.調査は,アンケート形式とし,全国の23道府県の902名の農業者から回答を得て,257件の事故事例を収集した.これらには,2件の死亡事故,134件の負傷事故が含まれ,242件において事故の形態を特定できた.これらを分析した結果,コンバインの事故は,重傷事故の割合から作用部における事故と転落・転倒事故に大別でき,概ね前者が全件数の2/3,後者が1/3を占めた.作用部の事故では,通院または入院を要した事故の割合が半数以上であり,今後,これらの事故を無くす対策が重要な課題と考えられた.作用部の事故の因子を分析したところ,その件数の2/3の事例で作業者の不注意な行動が一因と考えられた.一方,転落・転倒事故の件数の8割が負傷を伴わない事故であったが,収集された全ての死亡事故事例が転落・転倒事故であり,事故対策が必要と考えられた.また,トレーラまたはトラックによる輸送に関連する事故は自走移動およびほ場作業中より多かった.以上の結果から,コンバイン事故の軽減には,輸送時の転落防止対策および作用部への作業者の不注意な接近に対する安全確保手段の整備が必要であることが示唆された.