抄録
プラウ耕鎮圧体系乾田直播栽培の適用可能な条件を明らかにするため,5地域20筆の圃場において,鎮圧処理方法の異なる乾田直播栽培を行い,土壌状態,土層の飽和透水係数および減水深を調査した.鎮圧処理として,播種後に鎮圧を1回のみ行う低鎮圧処理,2回以上鎮圧を行う高鎮圧処理,および無鎮圧の圃場を設定して,鎮圧処理による土層の透水性の違いと減水深の関係性を解析した.土層内にグライ層が確認された圃場では,低鎮圧処理においても減水深が適正値である20 mm/d以下となりやすく,乾田直播が容易に適用可能な条件であることが明らかになった.地表下3 cmまたは5 cmから採取した土壌と下層土の飽和透水係数と減水深の関係を考察した結果,下層の透水性が高まり,止水層が存在しない圃場は,2回以上の鎮圧を行い地表付近の透水性を低下させることにより,減水深が低減していることが示された.このように地表付近と下層土の飽和透水係数を横軸と縦軸に配置し,2軸マトリクスで各圃場を分類することで,下層の透水性が高い場合は十分に鎮圧することが必要であることなど,鎮圧の必要性および排水機能の必要性を判断することが可能であり,乾田直播栽培の適用性の判定に有用であると考えられた.