農作業研究
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農作業体験用途に向けたコンテナ栽培での好適ブドウ品種の選定
細見 彰洋
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2017 年 52 巻 4 号 p. 179-186

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抄録

農作業体験に適したブドウ品種を選定するため,栽培作業の単純化や早期結実が期待できる雨除けコンテナ栽培で,果実品質よりも栽培の平易さと結実の安定性に重点を置いて品種比較を行った.ブドウ‘キャンベル・アーリー’,‘レッドポート’,‘スチューベン’,‘マスカット・ベーリーA’,‘ネオ・マスカット’の5品種うち,生育が均一で樹形形成や枝梢管作業が容易であったのが‘レッドポート’と‘スチューベン’,比較的弱勢で作業量の少ないのが‘マスカット・ベーリーA’であった.果実生産性では,‘ネオ・マスカット’以外は2年生から確実に着房したが,中でも,‘スチューベン’は花振いが少なく,整った房を得やすい点で優れていた.病害虫では ‘キャンベル・アーリー’,‘レッドポート’,‘スチューベン’は虫害(ブドウスカシバ,ブドウスカシクロバ,フタテンヒメヨコバイ,マメコガネ等)の防除を要した.これに対して,‘マスカット・ベーリーA’と‘ネオ・マスカット’は病害(べと病,黒とう病)が発生したものの,雨除けのためか蔓延は軽微で,防除は不要であった.病害が少ない雨除け栽培を前提にした場合は,両品種の方が防除作業は少なく済むと考えられた.以上から,供試ブドウ品種を栽培作業の簡便性と果実生産性から総合的に評価した結果,供試の中で,経験に乏しい栽培者が取り組み易い品種は‘スチューベン’と‘マスカット・ベーリーA’であった.

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© 2017 日本農作業学会
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