農作業研究
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研究報文
ドリップ灌漑およびドリップ・ファーティゲイションを用いたスイートコーン栽培における増収効果および多本取り
竹下 正哲中西 一弘高橋 丈博蓑原 隆前山 利幸日比 哲也戸祭 克益満 ひろみ後藤 元
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2019 年 54 巻 3 号 p. 151-161

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抄録

日本のスイートコーン総生産量は,FAOデータのある世界52カ国中11位であるが,1 haあたり収量では20位に落ちる.1 haあたりの収量が低い理由の一つは,1株から1本しか収穫しない栽培法にあると思われる.本研究では,スイートコーンの収量をあげるために,露地において点滴灌漑(以下ドリップ灌漑)を用いる栽培法を提案し,ドリップ灌漑によって1株多本取りが可能かを検証した.スイートコーン多本取りにもっとも影響を与える要因は窒素と考えられるため,窒素施肥量300 g/10 a/日のN1区,500 g/10 a/日のN2区,700 g/10 a/日のN3区およびドリップ灌漑なし(降雨のみ)で固形肥料を用いるC区の4処理を準備し,反復5回として完全無作為化法による実験計画を組んだ.結果はC区よりもN1,N2,N3区で有意に収量が多くなり,ドリップ灌漑の効果が見られた.N1,N2,N3区間には有意差が見られなかったが,窒素施肥量が多くなるほどに,平均収量も多くなった.またN3区の可販果数は平均3.27本/株となり,多本取りに成功した.収量の差を生んだ要因は,水分量と窒素施肥量であると考えられた.今後は各種センサー,衛星画像,クラウド,AIなどを連動させたIT農業の発展が期待されるが,その際点滴施肥灌水(以下,ドリップ・ファーティゲイション)による灌水量,施肥量の精密な制御が重要になってくる.

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© 2019 日本農作業学会
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