農作業研究
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54 巻, 3 号
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研究論文
  • 溝渕 佐織, 当真 要, 上野 秀人
    2019 年54 巻3 号 p. 143-149
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2020/03/20
    ジャーナル フリー

    本研究では,レンコン浅床栽培における田面へのボール浮揚がハスの生育や肥大根茎(レンコン)の収量に与える影響を評価した.直径80 mmのポリエステル製白色ボールを田面に浮かべ,2018年4月から9月にかけてハスを栽培した.ボール浮揚により,ボールの保温効果と田面水の蒸発量抑制による顕熱の増加に起因して地温上昇が生じ,ハスの生育が促進された.さらに,地温上昇は地下茎の分岐を促進したと推測され,肥大根茎の数の増加により収量が増加していた.ボールによる田面の遮蔽は,ハス生育促進だけでなく灌漑水の節水効果も期待できることが明らかになった.開花後の立葉(抽水葉)の葉色値上昇が肥大根茎の重量を増加していたことから,ボール浮揚に加え開花終了後の窒素肥料の追肥により,より大きな肥大根茎の数を増やすことができる可能性がある.

研究報文
  • 竹下 正哲, 中西 一弘, 高橋 丈博, 蓑原 隆, 前山 利幸, 日比 哲也, 戸祭 克, 益満 ひろみ, 後藤 元
    2019 年54 巻3 号 p. 151-161
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2020/03/20
    ジャーナル フリー

    日本のスイートコーン総生産量は,FAOデータのある世界52カ国中11位であるが,1 haあたり収量では20位に落ちる.1 haあたりの収量が低い理由の一つは,1株から1本しか収穫しない栽培法にあると思われる.本研究では,スイートコーンの収量をあげるために,露地において点滴灌漑(以下ドリップ灌漑)を用いる栽培法を提案し,ドリップ灌漑によって1株多本取りが可能かを検証した.スイートコーン多本取りにもっとも影響を与える要因は窒素と考えられるため,窒素施肥量300 g/10 a/日のN1区,500 g/10 a/日のN2区,700 g/10 a/日のN3区およびドリップ灌漑なし(降雨のみ)で固形肥料を用いるC区の4処理を準備し,反復5回として完全無作為化法による実験計画を組んだ.結果はC区よりもN1,N2,N3区で有意に収量が多くなり,ドリップ灌漑の効果が見られた.N1,N2,N3区間には有意差が見られなかったが,窒素施肥量が多くなるほどに,平均収量も多くなった.またN3区の可販果数は平均3.27本/株となり,多本取りに成功した.収量の差を生んだ要因は,水分量と窒素施肥量であると考えられた.今後は各種センサー,衛星画像,クラウド,AIなどを連動させたIT農業の発展が期待されるが,その際点滴施肥灌水(以下,ドリップ・ファーティゲイション)による灌水量,施肥量の精密な制御が重要になってくる.

  • 中山 秀貴, 佐藤 翔平, 鈴木 芳成, 根本 文宏
    2019 年54 巻3 号 p. 163-172
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2020/03/20
    ジャーナル フリー

    2011年の東京電力第一原子力発電所の事故後,玄米の放射性セシウム(RCs)吸収抑制のため,多量のカリ肥料が施用された.福島県は水稲作付け前の土壌交換性カリ含量(ExK)>250 mg K2O kg–1を目標値としたカリ肥料の増施(上乗せ施用)を推奨した.本研究では,県内水田のExKデータ(2011年:n=863,2014年:n=730,2017年:n=577)を収集し,13地域に分け,その地域的な変動を調査した.また,ExK増加に関わる土壌要因について考察した.2011年に高いRCs濃度の玄米が多く生産された地域では,2011年~2014年に313 mg K2O kg–1のExKの増加がみられ,約250 kg K2O ha–1 year–1の上乗せ施用があった.ExK>250 mg K22O kg–1の地点数の割合は,2017年時点で81%であった.2011年~2014年の各区域のExK増加量と有意な相関がある土壌要因は,有効CEC,Ek(ExK当量/有効CEC)であり,CECとの相関は認められなかった.2011年~2017年のExK増加量と上乗せ施用でのカリ施用量との線形モデルの決定係数(R2)は0.41であったが,施用量にEkの逆数を乗じた場合は0.56となりモデルの向上が図られた.このことはEk,もしくはEkを算出する際に用いる有効CECがExKの保持の指標になり得ることを示唆する.

  • 稲野 一郎, 加藤 弘樹, 藤本 与, 佐藤 禎稔, 岸本 正
    2019 年54 巻3 号 p. 173-182
    発行日: 2019/09/20
    公開日: 2020/03/20
    ジャーナル フリー

    農家人口の減少に対応するため,ロボットトラクタが開発され,実証実験を開始した.ロボットトラクタは同一ほ場内で有人トラクタとの協調作業が可能であるが,その視認性をトラクタオペレータからロボットトラクタへの視点をアイマークレコーダによって分析することで検証した.ロボットトラクタとの協調作業では,ロボットトラクタへの注視割合は51~67%であった.ロータリハローの機体中心マーカの利用は,ロボットトラクタの監視には効果があった.注視点の停留時間とサッケード回数からロボットトラクタ協調作業時の安全性に必要な視覚情報量は無理なく取得できると推測できた.旋回時およびロボットトラクタとのすれ違い時は,移動方向への注視割合が多くなるため,ロボットトラクタの注視時間割合は小さくなった.

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