農作業研究
Online ISSN : 1883-2261
Print ISSN : 0389-1763
ISSN-L : 0389-1763
研究論文
早播の秋播性小麦における高収量の集約的生産体系
谷尾 昌彦渡邊 和洋中園 江内野 彰水本 晃那
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 54 巻 4 号 p. 209-223

詳細
抄録

日本において小麦の収量を高めることは重要である.そこで,東海地域における高収量の生産体系を開発するため,高窒素施肥条件において,麦踏み,植物調節剤エテホン及び葉殺菌剤メトコナゾールが早播の秋播性小麦「さとのそら」の農業特性及び原粒品質に及ぼす効果を2年(2017-2018年)解析した.秋播性小麦を早播することによって,早春の凍霜害と梅雨の穂発芽被害を回避できた.麦踏み(小穂分化期)は稈長にほとんど影響なく,エテホン(出穂始期)は短稈化によって,倒伏を軽減し,麦踏みとエテホンの組合せは倒伏軽減効果が最も高かった.メトコナゾール(止葉マイナス2葉期と止葉期)は葉の病気を軽減した.麦踏みの収量への効果は試験年(土壌水分条件)によって異なった.エテホンとメトコナゾールは,倒伏と病気の程度が小さかったため,収量に影響はなかった.麦踏み,エテホン及びメトコナゾールを組合わせた生産体系は,高い収量を示し(2017年:750 gm–2,2018年:676 gm–2),その原粒品質は麺用品質基準を概ね満たした.また,高い収量と品質は大規模試験でも実証された.これらの結果から,東海地域において,早播の秋播性小麦における集約的生産体系は収量及び品質が高いと考えられた.

著者関連情報
© 2019 日本農作業学会
前の記事 次の記事
feedback
Top