農作業研究
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研究報文
育苗培土への有機質肥料の混和後静置期間が水稲苗生育と培土中無機態窒素に及ぼす影響
~栃木県の黒ボク土地域における有機育苗技術の事例~
平井 英明朝妻 英治星野 幸一田中 治夫高橋 行継
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2019 年 54 巻 4 号 p. 225-235

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抄録

プール育苗条件下における菜種油粕・魚粉と床土原土との混和後静置期間が土壌の無機態窒素量,苗の窒素含有量,および水稲の有機苗の生育に及ぼす影響を,2013年,2014年の2か年にわたり検討した.その結果,菜種油粕・魚粉の床土原土への混和後静置期間が4週間まで長くなればなるほど,土壌中の無機態窒素量や水稲苗の窒素含有量の値が増大し,無機態窒素量は,水稲苗の草丈,窒素含有量,生育むらと有意(P<0.05)な正の相関関係を示した.水稲苗の窒素含有量の値は,水稲苗の草丈,乾物重,生育むらの値と有意(P<0.05)な正の相関関係を示した.すべての水稲苗の葉齢は,中苗の基準を満たした.播種4週前混和後静置した培土で育成した水稲苗は,生育むらの発生が懸念されたが,有機中苗の草丈の基準14 cm以上を満たす可能性が指摘された.また,菜種油粕・魚粉を播種当日に混和した培土で育成した水稲苗は,稚苗の草丈の基準12 cmに達しないものの,生育むらの程度は小さかった.機械による早期移植を前提とした場合,播種1週間前に混和後静置した培土は,葉齢は中苗の基準を,草丈は稚苗の基準12 cmを満たすとともに,生育むらの程度が小さく,最適な有機苗と考えられた.

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© 2019 日本農作業学会
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