農作業研究
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研究論文
チゼルプラウによる深耕が水稲-小麦-大豆の2年3作で輪作される水田転換畑における小麦作時の砕土率,土壌物理性,排水性,生育収量に及ぼす影響
川原田 直也田畑 茂樹内山 裕介
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2022 年 57 巻 4 号 p. 215-230

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抄録

小麦および大豆の低収要因とされる作土下層の土壌の緻密化,作土層の排水性の不良を改善可能なチゼルプラウによる深耕を含む播種作業体系(深耕→砕土→播種:以下,チゼル深耕体系)と慣行のロータリによる浅耕を含む播種作業体系(浅耕→播種:以下,ロータリ耕体系)を水稲–小麦–大豆の2年3作で輪作される水田転換畑の小麦作において,計9ほ場で比較検討した.その結果,チゼル深耕体系では播種関連作業時の土壌含水比が低下し,砕土率が向上するとともに,作土下層の孔隙率,気相率,有効水分,飽和透水係数が高まり,その改善効果は小麦の収穫時まで確認された.さらに,作土下層の土壌物理性の改善により,小麦生育期間中の作土層の滞水時間が減少し,排水性が改善した.また,チゼル深耕体系では,播種後の砕土率,作土下層の土壌物理性,作土層の排水性が総合的に改善されることにより,苗立ちが向上し,4葉期,幼穂形成期,止葉抽出始期の茎数および生育指標値が高まった.その結果,チゼル深耕体系では主に穂数が向上することで収量が12-13%高まった.ただし,本暗きょが未整備で作土下層以深の透水性が不良かつ,深耕後にまとまった降雨が観測される場合には,播種関連作業の遅延を招く可能性があることから,チゼル深耕体系の生産現場への安定的な導入のためには,必要に応じ,本暗きょ等の排水技術と組み合わせることが有効であると考えられた.

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© 2022 日本農作業学会
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