老年歯科医学
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原著
病院·介護老人保健施設職員の口腔清掃に対する認識
大神 浩一郎岡田 千奈田坂 彰規荻原 俊美上田 貴之櫻井 薫
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2010 年 25 巻 1 号 p. 26-30

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抄録
口腔清掃は要介護高齢者にとって誤嚥性肺炎などを防止する重要なケアの一つである。しかし, 介護老人保健施設や病院や病院の現場での口腔清掃は歯科関係者以外の現場職員に委ねられることが多いのが現状である。そのため, 口腔清掃に携わる者の職種の多さから認識程度も多岐にわたると考えられる。本研究の目的は効果的な口腔清掃を行うために, 職員の口腔清掃に対する認識の現状を明らかにすることである。
介護老人保健施設およびリハビリテーション病院の職員計264名を対象に配布調査法によるアンケート調査を実施し, 各項目について単純集計を行った。また, 現在一人当たりの口腔清掃にかけている時間と一人当たりの口腔清掃にかけたい時間との間で対応のある差の検定を行った。
有効回収数は195名 (73.9%) であった。その中で, 口腔清掃に興味がある者は71%, 口腔清掃を行ったことがある者は85%であったが, 64%の者が現在自分の行っている口腔清掃を不十分と感じていた。そして口腔清掃の実技指導の受講者は36%で, 97%の者が口腔清掃の指導を受けたいと回答した。また, 1人あたりの口腔清掃にかけたい時間と現在の口腔清掃にかけている時間の差は平均2.15.2分で, 有意な差が認められた。
以上の結果より, 職員に対する口腔清掃の認識と技術の両面での更なる指導の必要性および口腔清掃の時間を十分に取ることができるような制度改革の必要が示唆された。加えて本結果は, 職員による口腔清掃の限界も示され, 歯科専門職による継続的な指導体制の確立と介入が不可欠であることが示唆された。
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© 2010 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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