抄録
本研究の目的は高齢無歯顎者の口腔清掃頻度と義歯清掃頻度にパーソナリティーが及ぼす影響を明らかにすることである。被験者は義歯を問題なく使用している上下顎無歯顎者とし,1 日あたりの器械的口腔清掃回数と義歯清掃回数とを質問紙法にて調査した。パーソナリティーの調査は,Eysenck の質問紙法にて内向性・外向性および情緒安定・不安定因子に関する要因について調査した。器械的口腔清掃回数および義歯清掃回数と,パーソナリティーの各要因との関連についてロジスティック回帰分析にて解析した。器械的口腔清掃回数の平均は 0.9±1.2 回/日,義歯清掃回数の平均は 1.9±1.2 回/日であった。器械的口腔清掃回数について,情緒安定・不安定に関する要因である依存性・自律性(オッズ比=1.910,p=0.003)が,また義歯清掃回数について内向性・外向性に関する要因である活動性・不活動性(オッズ比=3.064,p=0.021)と情緒安定・不安定に関する要因である依存性・自律性(オッズ比=0.382,p=0.040)とが変数選択された。以上より,パーソナリティーは器械的口腔清掃頻度と義歯清掃頻度に影響を及ぼし,活動性および自律性が高い者ほど清掃を行っていることが明らかとなった。