抄録
過去に,開口筋が喉頭挙上筋であることを利用して,嚥下機能の評価を目的とした開口力測定器を開発し,健常者,嚥下障害患者の開口力を測定した。本研究では開口力の測定値の検者内および検者間一致率を級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient, 以下 ICC)を算出し,測定値の信頼性を検討した。検者は,開口力計を用いた経験のある 2 名の歯科医師により行われた。検者内一致率は,嚥下障害のない健常若年者 8 名(男性 5 名,女性 3 名,平均年齢:28.4±2.8 歳)を対象として ICC (1.1) を算出し,また検者間一致率は,健常若年者9名 (男性 6 名,女性 3 名)を対象とし ICC (2.1)を算出した。開口力を二回測定した平均値の検者一致率は ICC (1.1)=0.96 であり,検者間一致率は ICC (2.1)=0.94 であった。開口力は舌骨上筋の筋力を反映していると考えられるが,舌骨上筋の筋力低下は舌骨の不十分な挙上を招き,誤嚥,咽頭残留の原因となる。それゆえ舌骨上筋の筋力を評価することは嚥下機能を評価する上で有用である。本研究により開口力測定器は高い信頼性が示され,臨床的に有用な筋力測定手法になりうると考えられた。