老年歯科医学
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原著
スダチのにおい刺激および温熱刺激による唾液分泌促進補助法の考案
東岡 紗知江比嘉 仁司本田 剛中道 敦子本釜 聖子永尾 寛市川 哲雄
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2014 年 29 巻 1 号 p. 3-10

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抄録
加齢や服薬に伴う唾液分泌能の低下は摂食・嚥下障害や誤嚥性肺炎につながる深刻な問題であり,有効な対策が求められている。本研究では,柑橘系のにおい刺激と顎顔面周囲への温熱刺激の併用によって唾液分泌を改善する方法を試みた。今回の試験では,スダチのにおいを実際の患者の食事に応用するにあたって,量産可能な代替香料の有効性(実験1),および作用の持続(実験2)について検討した。対象者は,健常成人94 名(実験1:68 名,男性37 名,女性31 名,平均年齢24.3±2.1 歳,実験2:31 名,男性23名,女性8名,平均年齢25.5±3.9歳)とした。 におい刺激剤としてスダチ果皮より抽出したスダチ精油と,スダチの香気成分資料をもとに精製したスダチ風人工香料を用いた。温熱刺激には,使い捨て温熱アイマスク(めぐリズム蒸気でホットアイマスク®無香料,花王株式会社)を用いた。におい刺激の有無と温熱刺激部位別に8 条件を設定し,1 時間の唾液分泌量の変化を比較した。唾液分泌量の測定にはワッテ法を用いた。 安静時を基準とした唾液の増加率において,スダチ精油とスダチ風人工香料間で有意な差は認められなかった。刺激後1 時間の唾液分泌量の変化より,におい刺激は刺激当初に,温熱刺激は徐々に唾液量の増加を促すことが示された。食事時のリハビリテーションへの応用には,食事のタイミングや食事時間を考慮した刺激の組み合わせが有効であることが示唆された。
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© 2014 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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